news

SEAMAJ第三十三回研究会開催録(転載無用)

SEAMAJ第三十三回研究会開催録

日時 2023年2月25日(土)午後2時30分より午後5時まで (ベルギー時間午前6時30分、上海時間午後1時30分) 開場予定 午後2時。

講師 ;  和田木 哲哉様 三菱UFJモルガン・スタンレー証券

講演タイトル ; 「半導体産業の未来展望」

概要 ; 半導体市場100兆円に向けた中長期の見通しと市場のドライバ、注目技術について解説。

参加者(敬称略)

筑根、濱田、井古田、小林、鈴木、辻村、米田、小森、新井、水島、田中、和田木、小川、国井、三重野

半導体業界の明るい未来

 スーパーサイクルとは何だったのか。市場爆発の契機は2回

 メタバースが次のサイクルをけん引。注目すべきは3つの用途

 カーボンニュートラルに向けた動きは、もう止まらない。転換点は20年

 車載用半導体だけが、なぜ不足しているのか

 中国半導体業界のリアルな状況と台湾有事への考察

 Intel苦戦の理由とチップレットへの期待

 まだまだある半導体市場のドライバ

 世界も人も大きく変わる。米国ハイテク業界では「超人類」が次のテーマ

 スーパーサイクルとは何だったのか。市場爆発の契機は2回

スーパーサイクルの背景

-コンピュータがオフィスへ、家庭へ(家電化)、そして個人で1台(個電化)

-スマホ、PC、タブレットの複数所有が当たり前に

-新興国の富裕化よる電子機器需要の拡大

-あらゆる機器に半導体が入り、インターネットに接続される

以上は、全て間違い

第一次スーパーサイクルの始まり 16年2月

オンラインサーバーがHDDからフラッシュに一気に置き換わった

DRAM  2014年 22% 2018年 40%

Flash         11%       35%

第二次スーパーサイクルの到来:19年4月

ムーアの法則再起動

-TSMCの5nm+、EUVLを5-6層に導入。大口顧客から大量商談獲得に成功(19年4月)

-EUVL導入の効果; EUVLを導入したN7+はN7に比べ集積度が15~20%改善, EUVLを導入したN6はさらに集積度が18%改善

-先端技術導入による性能改善、需要喚起、拡大再投資のサイクルが復活

 メタバースが次のサイクルをけん引。注目すべきは3つの用途

メタバース恐怖症に陥ったGAFAM

Google

– ARグラスを2013年に発売。世間の評価は辛い。それでもめげずに17年、19年に改良版を投入。20年以降もARグラス関連企業の買収に数十億ドルを投入

– VRプロジェクトが14年にスタート

– Googleカードボードをリリース、SDKを提供

– 消費者向けにビューワーを投入

– 教育用プログラム「エクスペディション」を発表

– しかし、19年にカードボード、21年にエクスペディションが終了

– 16年にVRプラットフォーム「デイドリーム」を立ち上げ、24年に新しいAR・VRプラットフォームを発表の予定

Amazon

– 19年にスマートグラス「エコフレーム」を投入。売上は余り芳しくない

Apple

– AR、VRに関しての発表はないが、関連スタートアップの買収を繰り返す

マイクロソフト

– X-box事業の存在は大きなアドバンテージ。メタバース時代の到来で復権が有力視されている

– VRグラス「ホロレンズ」を投入。累計販売台数は100万台に達していないと言われているが、コロナを追い風に、会社の想定を大きく上回る売上を記録。国防総省の大量発注に加え、半導体製造装置メーカーなどハイテク企業で大量採用の動きが相次ぐ。

エッジサーバーは切実に必要とされている ゲームのレイテンシー最高

ゲーム会社は、①同じ都市圏のプレイヤーだけでマッチメイキング②ディレイ方式(反応が遅いプレイヤーにレンダリングを合わせる)③ロールバック方式(相手の反応を予想して描画)などの技術を駆使。 レイテンシーが10ミリ秒短くなるとプレイ時間が6%増加する。

エッジサーバーは切実に必要とされている 描画能力

-マルチプレイヤー型オンラインゲームをするには、レンダリング能力が不足数百人が同じ空間に集まって自由にアバター(キャラクター)を動かすのは不可能

-コンサートは数十名ずつ別の部屋に誘導された。数万人のコンサートは、50名ずつ数千の部屋で開催された

-フォートナイトの100万人のコンサートは、宇宙空間(レンダリングの負荷が極めて低い)に飛び出て移動しているだけだった。自由に動き回れなかった

-100名のバトルロイヤルは、各プレイヤーは開始時に離れた空間に置かれ、一度の多くのプレイヤーが戦わないようになっている

-マリオカート、フォートナイトなどのマルチプレイヤー型オンラインゲームは、事前にデータをダウンロード。様々なキャラクターの体のパーツ、表情などの描画パターンをユーザー機器に格納しておく。サーバーから送られるのは必要最低限のデータで、ユーザー機器側で描画。サーバーが描画した画像を共有するわけではない。

-そのため、あらかじめ決められた表情、指形状などしか再現できない。

ChatGPTへの期待

-モデルの性能を数倍上げるために必要なパラメータ数は数十倍。しかも、限界効用は逓減

-パラメータ数が増えると、べき乗則に従って事前学習時間も増加。半導体の性能進化で一部だけ相殺

-AIの進化は爆発的な半導体需要を生み、装置需要を作り出す

-他のサーベイやシミュレーションでも事前学習コストは10億円でほぼ一致

-MUMSSが推定する内訳は; 電力代をメインとしたランニング費用が2億ドル, 半導体の償却費が4億円, 製造装置は1億円弱(半導体の内数),事前学習を10回以上、実行するケースも。

 カーボンニュートラルに向けた動きは、もう止まらない。転換点は20年

CN関連市場

-中国のCN宣言の重みは、欧米諸国とは異なる

-中国は、CN関連市場攻略の布石を打ち終えた

太陽電池、風力発電、EV、蓄電池、原発、AI論文採用数

スマートシティ 社会インフラ ; GPS、AI監視カメラ、自動運転EVによるMaaS、AI電力需要予想システム

-半導体市場にもAI半導体、パワー半導体の需要増の恩恵

CNの大転換

  • 電源のグリーン化;2050年 中国 太陽光20~%、+風力60~%、+その他再エネ~~75~%、IEA 太陽光~30~%、+風力~70~%、+その他再エネ~90~%、欧州 太陽光+風力~70~%、+その他再エネ~80~%
  • 動力原の電化

-都市化効果でCO2を15%削減

-スマートシティ化でSDGs目標の70%が達成可能

xEV化、オール電化、電力炉

データセンターの消費電力低減は急務

-大和ハウス工業が千葉に大型データセンターを建設。15棟、総床面積は東京ドーム7個分

-オーストラリアのAIRTRUNKが入居予定。21年稼働の第1期分だけで、和歌山県の総消費電力の半分を費消

– GAFAは、事業活動用電力を全て再生可能エネルギーで調達の方向。Appleは取引先に100%の再エネ調達を要求

-欧米は再生可能エネルギーがグリッドパリティに到達

低消費電力型データセンタの必要性~半導体製造装置全般に恩恵~

2030年のデーターセンター電力消費量は、原発300基分。

低消費電力型データセンタへの道

シンガポール政府は、今後、低消費電力型以外のデータセンタ建設は認可しない

オランダでもデータセンターの建設規制の動き

NEDOのグリーンデータセンターは現行の設備に対して40%以上の省エネを目指す

-光エレクトロ二クス技術開発

-光電融合デバイス:IOWN

-光スマートNIC

-光に適合したチップ・技術の開発

-省電力CPU

-省電力アクセラレーター

-広帯域SSD

-高速・大容量・低コスト不揮発メモリNRAM:DRAM代替

-ディスアグリゲーション技術:計算負荷に応じてデバイスごとに計算リソースを割り当てるAI割当制御ソフトと、大容量で伝送負荷が小さい光配線を組み合わせる

 車載用半導体だけが、なぜ不足しているのか

-車載用半導体の売上  構成比は4%前後。しかし、品質要求は最も厳しい。価格要求も厳しく、半導体メーカーから見た自動車メーカーはタフな顧客。

 中国半導体業界のリアルな状況と台湾有事への考察

台湾有事への道:米国を凌駕する中国のAI技術

-中国はディープラーニング能力の重要な利用方法で米国を追い越しつつある」(エコノミスト誌、2017年)

-社会インフラ関連を含むAI投資では中国が米国を大きく上回っている」と米国国防省が警鐘

-AIの特許出願数、論文数で、中国はすでに米国を凌駕

-米国のモバイルウォレットは25年に1兆ドル超えへ

-しかし、中国は23年に達成。米国は12年遅れ

-世界のクレジットカードの利用額は23年に45兆ドルへ

-一方で、20年のアリペイとウィーチャットペイのモバイル決済金額は約55兆ドル

-アリペイはピーク時には毎秒45万9000件の取引を処理。AI生体認証技術によって不正率は0.0006。米国カード対面 2.92, 米国カードe c 11.44。

出所: 「ザ・メタバース 世界を創り変えしもの」(飛鳥新社 マシューボール著)を基にMUMSS作成

ロシアの最大の半導体の輸入元は中国

-ロシアはTSMCや中国に半導体製造を委託していたが、TSMCはロシアとの取引を停止。中国ファウンドリが受託

-中国からロシアへの半導体輸出量はウクライナ紛争後に4倍に

台湾有事への道:米中半導体摩擦

-民主党の対中政策は、当初は融和的。米国のSPEメーカーの最大市場は中国に。BISの

規制は表面的

-中国トップファウンドリの技術力が上昇し、7nmの半導体製造に成功、慌てて、実効性の

高いArF液浸露光装置の輸出規制をしようとするもASMLが猛反発。AMAT、Lam、ニコンなど、米国企業やASMLの競合も巻き込んで装置の輸出を規制へ

-さらに、米国籍エンジニアの中国半導体工場の就労、EDA、AI用半導体の輸出を規制

-CHIPS法の補助金を受け取った企業は中国で先端半導体投資ができない

-米国装置メーカーは、中国から脱出 (三重野コメント;脱出していません。)

– YMTCがEL入りも、同社は生き残りを探る

– Huaweiが中国ハイテク企業をサポート

– CXMTは品種転換中

-レガシープロセスはお目こぼし (三重野コメント;14nmよりも上)

 Intel苦戦の理由とチップレットへの期待

-EUV H-NAの予定が、TSMCに2年の差。

チップレット ~IntelとAMDの明暗を分ける~

チップレット化:チップを構成する微細なパーツをレゴのように組み合わせてプロセッサーをつくるという発想

チップレット化のメリット;チップ面積縮小、KGDの使用による歩留りの大幅な向上、機能ブロックごとの適正電力配分による消費電力の低減、各機能ブロックに最適なプロセスによる、デバイス製造と、パフォーマンスの向上、高集積化、高速化(Xilinx講演)

AMDのシェア急伸;TSMC陣営に入り、チップレット技術を活用。歩留まりとコストでIntelを圧倒

IntelがチップレットコンソーシアムUCIeを設立

– PC全盛期、IntelはCPU市場でパテントと訴訟戦略を駆使しほぼ独占状態を維持

-インタフェイスの標準化と改善を主導

-その結果、台湾、韓国、中国の企業が、安価で使い勝手の良い外部記憶装置、キーボード、マウス、ディスプレイ、マイク、メモリなどを開発、供給

-その結果、PCがさらに魅力的に

-PC市場の拡大でIntelの利益はさらに増加

-Intelはプロセッサを高付加価値領域として保持しつつ

-メモリ、電源供給、グラフィック、AD/DAなどの機能ブロックを安価に、かつ多彩なものを供給させる

-チップレットの魅力が高まり、市場の底上げが期待できる

– AMDも同様の恩恵を享受

– TSMCはタイルの受託製造事業を獲得

– Googleはチップ内製化のハードルが下がる

– Rapidusにとっても事業機会

 まだまだある半導体市場のドライバ

スマホの持続的性能進化と買い替えを促すAI搭載

– 半導体の微細化及び市場の成長ドライバとして、スマホまたは家庭用ネット端末に積載され、今後大きな進化を遂げることが確実なAIに期待

– GAFAのいずれもAI搭載端末を使用した業容拡大を成長戦略の一つに据え、技術開発、業務提携、関連企業の取り込みなどを進めている

– スマホ用プロセッサへのAI内蔵とAI機能の高度化は、試験の長時間化を招き事業機会となる

端末上での学習機能強化

-今後は、Googleが投入する可能性がある推論用TPUなどのNPUを搭載したスマホが、ブラウジングの情報に加え、行動履歴、写真、投稿履歴などから個人の趣向を解析し、ユーザーの生活の質向上を謳って、商品やサービスを推奨する可能性がある

– Google製のスマホでは、端末側で独自に学習データを生成する。この手法では処理速度やプライバシー保護というメリットがあるが、AIデバイスの性能、スマホ1台から得られるデータ量ともに限られているため、AIの処理精度の向上に限界がある

-Googleでは、端末上のAIで得られた学習モデルをクラウドサーバー上に送信し、サーバー側の学習モデルと統合することで、より精度の高いモデルを作成するフェデレーションラーニングによって、端末側のAIの性能を強化する。

フードテックと半導体製造装置業界700兆円市場の電装化が始まる

 世界も人も大きく変わる。米国ハイテク業界では「超人類」が次のテーマ

BMI(ブレイン・マシン・インタフェイス)の進化

– 2010年代、AIと脳科学が相互に大きな進化を促進

– AIと脳科学の融合に、今後さらにゲームプログラマが参入

– 高い創意とプログラミング能力、十分な資金とインフラを持ったゲームプログラマの本格的な関与で、メタバース、AI、脳科学ともに、これまでを上回る速度で様々な進歩や革新がもたらされよう

– BMIの進化は、メタバースによるバリアフリー社会、障がい者の生活の質をさらに豊かなものにすることができる

– 全身麻痺者、ALS患者、寝たきり患者が家族と再び意思疎通し、社会活動へ

– 同、料亭での食事、旅行体験などもできるように

脳とAIの融合 ~池谷脳AI融合プロジェクトより~

– 池谷脳AI融合プロジェクトでは、人工知能を用いて、脳の新たな能力を開拓し、脳の潜在能力を探る

– AIと脳を融合する基礎技術により、神経・精神疾患知能だけでなく、健常な脳の潜在能力

の開拓、人類全体の健康や幸福に貢献する

– 脳の記憶容量は1PB。10億人の脳を保存するに必要な容量は21年のフラッシュメモリ市場の1500倍。

質疑応答(敬称略)

辻村;スーパーサイクルの定義とは?

和田木;1.プレークスルーがあり、2.大きく上回る市場規模。

辻村;企業は、額が上がればいいでしょう? どうして、投資家は、毎期の比較で上げ下げを気にするのだろう?

和田木;株価を中心に、成長率を見るから。

辻村;チャットGPTは、どこで儲けを出す?

和田木;東芝のCellが、一番厳しいと言っていた。Cell自体が、早かったので市場に見合わなかった。プラットフォーマーのやり方は、試供品を無料で提供して膨大なデータを集めて最適化するやり方が出来る。

田中;VR、ゲームについて。

和田木;ゲームが技術ドライバーとなっている。そして、ゲームをスポーツ試合のように見に行く、Eスポーツだ。賞金は一億円とか。

小森;ゲーマーは、10G光ファイバーを引いている。ネット環境が参加型ゲームのクオリティを大きく左右する。

新井;Eスポーツは、投資信託にもなっている。

三重野;MEMS技術もゲームが技術ドライバー?

田中;超音波付デバイスとか、ライトハウス(VRヘッドマウントディスプレイに搭載されているトラッキングシステム)で位置を定めている。360度全方位カバー、1mm以下の正確な位置把握など。

小森;センサーをもっと多数使うようになるだろうし、種類も増えていくだろう。

和田木;経済原則。同じ事をやっても、集中度合い、経営者の資質(人間力、胆力、リスクを取る勇気、幅広い情報力、柔軟性、成長性など)によるところが大きい。

濱田;ルネサスはクルマで苦しい。自動車産業以外はどうなのだろう?

和田木;自動車メーカーと付き合う体力(自動運転とか)はラピダスには無い。

小川;ラピダスは、imecに対して求めようとしているのは、IBMのコア技術を繋ぐラインがないので、それを求めているようだ。

濱田;ラピダスの設計IP,ライブラリーはどうするのだろう?

三重野;東大Dラボ、産総研の役割が良く見えない。というか、ラピダス自体が良く見えていない。企画、研究開発だけで終わるのでは、過去の失敗パターンの踏襲となってしまう。

そうはならないように、我々自身は何が出来るかを考えて日本の半導体産業の復興に寄与していきたいものだ。それには、30年後から今を俯瞰して地道な計画を策定するのが良いと思います。

(文責 三重野)

ありがとうございます。

三重野

一覧に戻る