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SEAMAJ第三十二回研究会開催録(転載無用)

SEAMAJ第三十二回研究会開催録

日時 2023年2月11日(土)午後2時30分より午後5時まで (ベルギー時間午前6時30分、上海時間午後1時30分) 開場予定 午後2時。

講師 ;  新井 大輔 様  博士(工学) 研究員

名古屋大学 未来材料・システム研究所 山本研究室

講演タイトル ; 「経済・財務から見た日本の半導体産業と将来展望」

参加者(敬称略)

新井、濱田、井古田、国井、堀口、小川、小林、鈴木、小森、辻村、米田、田中、渡邊、林、和田木、三重野

【日銀への攻撃、標的にされる日本国債】

・2022年6月、金利上昇の思惑により、海外のヘッジファンドが日本国債の空売りを仕掛けたのに対し、日銀は1週間で11兆円もの国債を買って、これを買い支え、ヘッジファンドを撃退した。

・2022年9月、日米金利差に目を付け(米国が高金利・日本が低金利)、海外の投資家(と日本のFX投資家)が円売り・ドル買いを進め、円安は1ドル150円にも達したが、財務省・日銀が円買い介入を行って収めた。

・2023年1月、海外からの再度の国債空売りに対して日銀は2日間で10兆円もの国債を買い入れた。海外のヘッジファンドは、日本国債が値下がりするどころか、(高値でも)買い戻す国債すらなくなって、困ったはずである。

【国債のイールドカーブコントロール】

・日銀は2016年に(短期金利のごく一部を狙って)マイナス金利を導入したが、その際10年物国債までマイナス金利に沈んだため、10年物国債の金利を0%付近にクリップするイールドカーブコントロールを導入した。

・しかし現在は先進国がコロナ後のインフレのため金利引上げに入っている中、日本だけが景気低迷のため低金利を維持。イールドカーブコントロールが金利を低く抑えつける操作に変わってしまった。

・そのため、横軸に国債の残存年数、縦軸に金利をとったとき、10年物国債だけ金利が低く下に凸となる異常なイールドカーブとなってしまった。そこで、10年物国債の金利許容幅を±0.25%、±0.5%などと上げて、イールドカーブを滑らかにしようとしている(実際は上限の+0.5%にへばり付く状態)。2022年12月に許容幅を±0.5%に広げた際、海外の空売りファンドに譲歩した形となったが、2023年1月の空売り攻撃は上記のように撃退。

【なぜ日銀や日本円が攻撃を受けるのか?】

【無担保コール市場】

・日本の無担保コール翌日物金利(概要を後述)は、30年くらいほぼ0%に貼り付いている。したがって、この金利を調整することによる政策的自由度はなくなっている。日本は1990年頃のバブル崩壊から立ち直れず、政策金利を上げられない状態。諸外国は先進国も含めて違う。米国の政策金利はフェデラルファンドレートと呼ばれるが、景気動向に従って金利を上下させ、メリハリある政策をできている。

・コロナ禍をきっかけにした金融緩和により、先進国でインフレが発生し、金利引上げに入っているのに対し、日本が金利を上げられないため、日米金利差が広がってしまったのが上記の攻撃を招いている。

【GDP成長率の国際比較】

・1990年から30年間のGDP(購買力平価換算)を国際比較してみた。A exp(B y)(yは年)と対数表示で回帰をとると、Bはおおよそ成長率になる。米国・中国の成長率が例外的に大きいと見て除外しても、日本の成長率はドイツ、フランス、オーストラリアなどの先進国(成長が鈍化していると見られるような国)にも劣っている。なお、購買力平価換算では、物価下落が有利に作用するので、日本の成長率はデフレによる押し上げ効果を得ているのだが、それでも劣っている。

【株価指数の比較】

・米国の代表的な株価指数のダウ平均は、長期で見ると、およそ指数関数的な伸びを示している。1987年のブラックマンデー、2000年のITバブル崩壊、2008年のリーマンショック、2020年のコロナショックなど、凹むイベントは発生するが、その後に回復してさらに成長している。

・日本の代表的な株価指数の日経平均は、1989年12月に史上最高値を付けたあと、2023年になっても最高値を取り戻せておらず、長期で見て横這い。

・日本円が強かった民主党政権時代に米国株を買った人は、その当時、円高のため米国株を割安で買えたことと、米国株が順調に値上がりしたこと、さらに、最近、円安が進んだことによって、大儲けしたはず。

・2013年のアベノミクス以降、現在までの10年だけを切り出すと、、この期間の日経平均の上昇率は、ダウ平均に近い上昇を示している。

【複式簿記で経済を見られるようにするために】

【バランスシートの基礎】

・バランスシートの右側は、資産の出所を示しており、大きくは負債と純資産(純資産は利益余剰金を含む)。左側は資産でどのようにお金を使ったかということを示す(預金も含む)。会社の規模を大きくするということは、バランスシートを大きくするということであり、負債(または純資産)を増やすことで可能になる。

・お金を貸し借りすると、全体の資産が増える。たとえば、①AさんとBさんが自己出資して2000円を持っていたとする。②AさんがBさんから1000円を借り、1000円の借用書をBさんに渡す。その結果、③Aさんには3000円の資産があり、Bさんには1000円の現金と1000円の借用書で2000円の資産がある。2人の資産の合計は4000円から5000円に増えた。

・この簡単な例からわかるように、借金をして事業規模を大きくする経営者がいないと、社会全体の資産はあまり増えない。

【1989年~2019年(30年間)のバランスシートから見る日本企業】

・信越化学、ディスコ、ムラタなどは、自己資本比率が80%程度以上と高く、借金ではなく純資産を増やすことで事業成長させている。無借金経営などと呼ばれる。自己資本比率が高いということは、株主の資産が多いということで、超然、株価は高くなる。これは、1会社の立場では良いことかもしれないが、社会全体の経済規模を大きくする点からは望ましくない(純資産に頼って総資産を増やすということは、内部留保を厚くするということでもあり、賃金も上がらないだろう)。

・日本の多くの電機会社の総資産は横ばい。NECや富士通のように総資産が減って会社が小さくなっているところすらある。

・自己資本比率は30%以上なら健全とされている(日本の基準)。これを30%以上に保ったまま、借金も増やしながら事業規模を大きくするのが、アグレッシブな経営だと言えるだろう。日本でこれができているのは特にトヨタ自動車とソフトバンクであり、楽天などもそう。

・日本企業は事業規模を大きくするために借金をして、金利を支払うどころか、預金をしてトータルで金利を受け取っている。企業の本来の姿としては疑問。

【エルピーダの倒産】

・2000億円の短期借入金の借り換えの際、日本政策銀行は、借り換えではなく、どこか出資者を見つけてきて、資本金2000億円を積み増ししろと言い出した。この(無茶な)要求に坂本さんは応えられず、倒産した。そのとき、エルピーダは赤字を出していたが、自己資本比率は約30%であり、バランスシート的には倒産するような状況ではなかったと言える。エルピーダの倒産によって誰が得をしたのか?

【銀行の貸し出し】

・銀行は預金を受け付けると、その中から預金準備金を残して貸し出せる。貸し出したお金は、普通、自行に預け入れられるので、預金が増えて、また預金準備金を残して貸し出しが可能になる。預金準備率をa%とすると、預金Y円に対して最大でY×(100/a)円を貸し出せる(等比級数の収束から)。預金準備率が1%なら、預金の100倍までの貸し出しが理想的には可能である。

・預金準備金不足のため破綻した例として北海道拓殖銀行がある。預金準備金不足は無担保コール市場で借りることで補える。(拓銀はコール市場での借入れさえ間に合わない状態だった)。この金利が翌日物で0%に貼り付いている(前述の政策金利)。

【国債と公共事業】

・金融緩和で日銀が市中銀行の国債を買取ると、銀行の現金=日銀当座預金が増える。しかし、それだけである。日銀当座預金(資産)は、銀行の負債である預金とは何の関係もないので、これだけで庶民が豊かになるわけではない。銀行の日銀当座預金から誰かがお金を借りてくれないと社会全体の資産は増えない。

・民間がお金を借りないなら、国が国債を発行して、市中銀行に国債を買い取らせる。市中銀行の日銀当座預金が、政府預金に振り替えられる。

・国が公共事業を行えば、政府から代金を受け取った企業は銀行に預金し、銀行預金が増え、日銀当座預金も銀行に戻る。さらに、それで銀行からの貸し出しが増えれば、正の循環になる。

・政府が事業を行えば、政府の資産(固定資産や出資金)が増えるが、それが不良資産(品質の悪いインフラや儲からない企業)だとすると、国債に紐づいた資産にロスが生じる。日本政府の借金の半分弱がロスとなっている。先進国の政府の財務はロスが発生するものではあるが、ロスがどんどん増えるのはまずい。国債の価値に疑義が生じる。ラピダスに政府が出資するのはよいが、儲からない会社(ロス)とならないようにしないといけない。

・国債が海外に買われたり、国債で行う事業を海外の企業が受注すると、国の資産が海外流出する。これが行き過ぎると、ギリシャのように国家財政の破綻となる。

【借用証書としての貨幣】

・日本円は日銀の借用証書である。

・金本位制なら、日銀は金(ゴールド)と引き換えに、紙幣を発行する。

・現在は管理通貨制度を採用しているので、日銀は国債と引き換えに、紙幣を発行する。

・しかし、国債も、政府の借用証書としての役割を持っている。

・結局、日本円の裏付け資産となる紐づけをたどると、日本円→(日銀)→国債→(政府)→政府資産 となり、公共事業によって形成される資産の価値が重要であることが分かる。

(新井様、田中様 開催録作成ありがとうございます。)

質疑応答(敬称略)

渡邊;エルピーダをマイクロンに渡して得をしたのは?

新井;SK、サムソン、マイクロン。

渡邊;ラピダスは上手く経営できるのだろうかという懸念がある。上手く発射して軌道に乗るように、良くチェックして提言を経産省に上げていくようにした方が良いと考えるがどうか?

新井;現在の主導的メンバーを見る限り、過去損をした人たちばかりのようだ。新たな発想が生まれる人材かどうかは、、、。

渡邊;一部の人達の損得で進むのは疑問が多い。ラピダス失敗したら、後が無い。トータルで議論をしていくのが良い。技術開発拠点にしても金額が伴っていない。

辻村;ペイオフの問題、大手銀行が潰れる可能性は?

新井;米中は、借金を回してGDPを上げている。それに対して日本は、GDPは上がっていないが、堅実と言えるだろう。

渡邊;日本の市場を大きくする戦略が無くなっている?

新井;ラピダスが市場で戦おうとするには、規模が必要で新規投資が嵩むであろう。従って、固定資産が増える。では半導体需要をどうやって、増やしていくのだろうか。

鈴木;今の日本は、MMT理論でお金を刷ったはいいが、誰も使ってくれないという理解でいいか?

渡邊;日本におけるEUVLの問題は高圧法があり、一週間メンテで止まってしまう。

以上

ありがとうございます。

三重野

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