第三回リモート勉強会開催録
日時 2020年10月31日(土) 午後2時30分より午後5時まで TEAMS
勉強会テーマ: 「半導体マーケッティング開発」
国内で次世代半導体製造を行う上で、どのような分野、企業、製品にフォーカスし、どのようにアプローチしていけば、持続可能なビジネスが成り立つか。
講師
半導体業界のタイガーマスク様 (皆さまご存じと思いますので、ご紹介は省略させて頂きます。)
原口 博行様 アペックス株式会社 営業企画本部 本部長
「1980年代の日本半導体の全盛期から今日の衰退期を間近で体験するかたわら、2008年から12年間、シリコンバレーで生活する中で、日本企業のイノベーションを進める問題点を分析し解決策を内外に発信してきた。」
1981年4月 :キヤノン販売(株) (現・キヤノンマーケティングジャパン(株))入社・半導体製造装置のマーケティングと営業担当。日本半導体産業全盛期に国内販売と輸出入販売の促進を経験。
2000年1月~ 2001年3月 :韓国半導体メーカへの半導体装置市場開拓を担当
2005年1月~ 2008年3月 :キヤノンマーケティングジャパン(株)産業機器事業部 営業本部長
2008年4月~ 2019年11月 :Canon USA 、Vice President & GM。 キヤノン産業機器ビジネス(グループ会社含む)の米国統括責任者
2014年1月~ 2019年11月(兼務) :Canon USA/San Jose Innovation Hub 責任者。キヤノングループのイノベーション推進活動ドライバー役 *社外活動:北カリフォルニア商工会議所・2014年度副会頭。2017年度全米商工会委員長
2020年1月~ 現在 :アペックス(株)営業企画本部長。新規事業開拓を担当。
–本テーマの背景≒強い危機感
次世代半導体の国内製造が必須:三つの理由
理由その一: 未来に渡って産業の柱 Lead the Future!!
「機器の頭脳」、「人の頭脳補助」、「エネルギーの源」;エネルギーは半導体技術が生み出している。エネルギーの進歩は半導体技術の進歩から。
「技術の中核」; 例。トヨタの弱体化 自動運転のCPU,AIは他人まかせ!! 富岳 NHKが日本の微細化技術でできたと言っていた*が、 なんと恥ずかしいことか。28nm以降は製造できない!! 「ベンチマークの一夜天下」 TSMC(台湾)に命運を握られた。*時論公論 https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/431872.html
理由その二: 産業の米から「人間社会のニューロン」へ
社会、産業、国家安全保障のインフラ ICAC5; IoT, Cloud, AI, Car, 5G、、、、。
理由その三: デジタル植民地化防止
VUCA World; 「昨日の友は今日の敵 」 他国の多面性を理解すること。例えば、台湾は今後どうなるか??? Volatility(変動性)、Uncertainty(不確定性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)
チップセキュリティ; Security on Chip,
CLOUD Act(Clarifying Lawful Overseas Use of Data Act)
米国政府が海外のデータの合法的使用を明確化する法律
「Mind F*ck」 Mind Fuck, Inside Cambridge Analytica’s Plot to Break the World
Christopher Wyle著
また、付け加えるならば、米中の競争により米国においても政府による国内半導体製造育成戦略が策定されている。中国、そしてかつての日本の政府政策による半導体育成を咎め続けたにも関わらず、米国政府が態度を変えた点はこれからの日本政府の成長政策の大きな分岐点となるように期待したい。(ここで日本政府が間違えて、今まで通りの踏襲をしていたら、先の見込みは暗い。)
–勉強内容
過去の歴史でことごとく、将来に渡って重要であろう製造、例えば、DRAM、OSAT等を海外に譲り渡した。当時の理由を言えば、「支えるだけの投資が出来なかった」からだろう。一つには国内の狭短期の経営戦略判断≒半導体に対する見誤り、もう一つは、米国による長期に渡る日本半導体包囲網があった。
では、如何にしたら、国内に於いて、持続可能なビジネスとなるのであろうか。一つの答えとして、「半導体製造のマーケッティング開発」が挙げられる。
世界全体を見れば、半導体は「スーパーサイクル」にある。これは間違いの無い事実であり、将来動向でもある。また、近未来で必要となる技術は、見えて来ている。健康、安全への脅威と要求が高まる。国家で負担できないサービスは民間(プラットホーマー)が提供していく。あらゆる事象をデータ化、モニターし、データ収集とAI運用することで、病気、事故、災害、テロ、犯罪を未然に抑止することが可能となる。
では、日本における過去の縮退(半導体製造におけるDRAM、OSAT等の撤退)は、何故起きたのであろうか。それについて、原口氏は二つの原因を挙げている。一つは、「高品質」vs「過剰品質」の大きな勘違い。もう一つは、「世界感覚の欠如」である。更に上げれば想像力の欠如。
日本の地政学的、歴史的背景から来る日本人(日本企業、政府)の致命的問題である。
対策として、CSE(Corporate Startup Engagement)が挙げられた。








–第三回SEAMAJリモート勉強会の提案、感想について
以下の提案、感想が寄せられています。
No.1: T様
(1)タイガーマスクさんが久しぶりに、まだ“ムーアは続く”と仰ってくれましたし、米中問題は良くまとまってました。
(2)原口さんのイノベーションの話も久しぶりで頭の体操になりました。
さて、日本は?と考えた時
1 毒ガスは貧者の核兵器、半導体は賢者の核兵器、軍事技術を育てないなら半導体は捨ててはだめ。国家を守りたいなら、GDPの1%は半導体に使って欲しいと発言しています。
2 ゲームに関しては、全く仰る通りで、かつてセカンドライフが流行り始めた際(この時に初めてリンデンドルが)あまりにも半導体性能が悪くて伸びませんでした。それが今VR,AR、xRへとつながっているのだと思います。なんにせよ、半導体が良くならなければゲームもだめです。逆に言えば、半導体(LogicもDRAMもNANDもその他デバイスもソフトもひっくるめて)を主導できれば先進国から落ちこぼれないと思います。まだ遅くはない?
No.2: S様
まだ、意見としてまとまっていないのですが、Intelを衰退ぶり、Silicon Valleyの
あとを追ったイスラエルや深圳の試作工場の立ちあがりを鑑みても、この業界の
変化の速さはすさまじいと感じます。
自分の中での、日本に再び半導体の製造工場なんてありえないと思っていましたが
この早さなら出来るのかもしれないと想えてきました。
情報が乏しく自分でも判断できないのですが、ミニマルファブでの先端品施策や
新規材料導入した製造はどのくらい見込があるのか、ご存知のかたいらっしゃったら
レクチャー頂きたいです。日本が長年かけて、いきついた一つの結論だと思いますので。
それと、前回のISCCで大阪大、京大、立命館、NECが共同で発表していたVia Switch
のFPGAに詳しいかたいらっしゃいませんか?
この二つの日本の技術を立ち上げ、リソはEBでも可能な領域(ニッチな商品)で勝負
できるようになることも一つの生きる道ではないかと考えてます。量産で数増えたときの
マイグレーションの仕方は大いに課題が残りますが。。
No.3:
第二回からの参加ですが、興味深い話をお聞きできる機会を頂けていること、感謝しております。
私にとって最も印象に残ったのは、自分なりの曲解があるのかもしれませんが、何をするにせよ、海外への積極的な展開が不可欠であるということでした。
3年前までのデバイスメーカー(東芝)在籍中は、デバイスを販売する立場ではなかったので、海外へのデバイスの販売など考えたことはありませんでしたが、学会や委員会(ITRS)などでは海外の方々との付き合いがあり、刺激になっていました。
現在の装置メーカーに移って以降は、そもそも半導体製造装置の販売先として、国内だけでは済まない状況になっていることから、海外顧客との付き合いが不可欠になっています。
このような、装置の海外への販売は、日本国内の半導体デバイス製造にとっては相対的にマイナスになりますが、半導体製造装置を作るのが日本であれば、結果的に「日本の半導体」の発展にはなるはずと、考えることにしています。
先日の勉強会では、EUVが日本で作れなかった経緯のお話などがありましたが、半導体製造装置にしても、日本の優位性は失われつつあります。
自分自身としては、そのような優位性をできるだけ継続できるようにしていきたいと考えています。
No.4:
今回の勉強会は、非常に有益なものでした。また、特に原口様の講演については、現在の米国での事業に対しても、参考になることが多く、考えさせられる内容でした。勉強会のテーマである、日本で持続可能な半導体製造ビジネスをどのように構築していくかについては、原口様の講演でも説明されたように、「最終形をイメージすることにある」と理解しています。そのイメージの内容は、半導体製造ラインをつくることさえも、手段の一つととらえる必要があるかもしれません。更に、「日本人には、その最終形を考えることが不得意」との説明もあったように、海外にも広く求める姿勢も必要と理解しました。個人的なイメージですが、「一人一人や個々に最適化されたデバイス(パッケージ)を製造する工場」はどうかと思いました。稚拙な考えと思いますが、大量生産する前工程や単機能のチップでは、今更日本の工場で生産する必要もなく、また、特殊材料をターゲットしたものでも、その対象とする市場は限定されると考えました。それよりも、将来にわたって継続的に成長するものを考えた時に、各個人に最適することには限界はないと考え、その為のしくみや必要とされるデバイスを効果的に製造する為のラインを日本で作れるとすると面白いとかんがえました。当然、それがどのようなものになるかは、マーケティングが重要となってきますし、製造ラインにもブレイクスルーが必要となります。勉強会の感想だけでは、申し訳ないと思い、あえて浮かんだイメージを描きました。少しでも、一助になればと思います。今後も勉強会楽しみにしています。
No.5: K様
先日は、非常に貴重な機会をいただき、御礼申し上げます。
断片的な情報を得ているものの、半導体業界の動向、解析についてお伺いでき、非常に有用な時間でありました。
・Intelの栄枯盛衰は、小職はサプライヤーとして長年対面してきた経験からも、同社の強みが成長の妨げとなった行った過程を復習するようでした。
確かな製造技術を基にした信頼性の高いLogic Deviceを開発し続けられたきた同社が、その強さの源泉であったCopy Exactが足かせとなるとは感慨深いものでした。半導体デバイスの微細化の限界に近づく従い、高度に計画されたPDCAに基づく開発・量産から、今風にいうOODA、Agile的な取り組みへと変化せねばならないのであろうと思いました。
・米国シリコンバレーでの新たしい技術・製品を生み出すエコシステムは、新規事業探索を行う身としては活用すべきものであると常々思っております。CVCへの参画による次世代成長分野の探索は、新技術、視点の点でも常々見ていくべきものと思います。最近は、中国、さらには、インドの動きも新事業に大きなヒントを与えてくれます。一方、なぜ、日本でこのようなエコシステムが育たないのか、という点は、残念でなりません。日本においても、高いレベルの大学もあり、相応の資金もあるのですが、有機的なつながりのもと大きな成長につながっておりません。様々な理由はあるのでしょうが、本質的な点で何かが足りないのだと思います。ここは、今後の考察のポイントかと思います。
・小職、社会人として初めて開発に携わったのが実装分野でした。すでに20年以上も前の話ですが、JISSO、という言葉が世界で広く使用されるほど日本が進んでましたが、今では、非常に残念ながら、海外の後塵を拝してしまってます。俗な良い方ですが、標準化のプロセスが下手で、日本発の技術が海外へ流出してしまい、流出先で成長させられてしまいまいした。もともと、思い入れのある分野であるので、非常に残念です。まだまだ日本には、東北大などのスピントロニクスなど先行している高い技術分野が残ってます。これらを如何に、日本の繁栄のために育てていくか、を考えていくべき時と思います。
No.6:
先日の第3回勉強会も大変興味深く聴講させて頂きました。
私の個人的な感想ですが、デジタル庁のお話がありましたが、マイナンバーカードに搭載するセキュリティチップとその管理システムは、セキュリティエリアでは遅れている日本のプラットフォームを立て直す一つの切り口かと思いました。
Chipletへの動向は、議論にもありましたが、本来は日本がコア技術をかなり持っていたパッケージング領域なので、これをPLP(Panel Level Package)方式でコストも含めて先端のパッケージソリューションとして提供することを挑戦してはどうかと思いました。
ミニマルFABを取り上げられていましたが、私の認識では先端パターニングやイオン注入などのコア技術が不足しており、少量多品種・試作向けの良いアイデアだとは思うのですが、適用範囲は先端以外(CMOS以外)に限定されるように思います。そこに活路を見出す、との方策があるのかも知れませんが。
EUVリソグラフィはついに生産適用となり注目されていますが、日本は初期は力を入れていましたが、途中で息(お金)が続かなくなり、いくつかのコア技術(EUVマスク・ブランク検査装置、EUV光源技術、マスク・レジスト材料など)は残りましたが、日本として圧倒的な競争力にはなっていません。弊社は最後の国プロであるEIDECまで継続してEUVマスク関連プログラムに参画していましたが、残念ながら獲得したものは少なかったのが現実です。グローバルな活動情報に触れ続けていられたのが唯一の成果かと思っています。EUVリソグラフィ対応としては、材料、装置などで優位な領域もありますので、これをIPを保護したうえで、ソリューションパッケージとして輸出する、などはあるかな、と思います。また、このまだ有利な領域を更に磨くために、EUVリソグラフィ技術開発センターなどを国内に設置すると関係者は利用することで開発が加速しそうです。
シリコンバレーとの比較は、弊社も同地にオフィスがあるので良く理解できました。米国のリーディングカンパニーは、アイデアはあるが、解決策(実際のモノづくり)は判らない、と言うケースが多くみられるので、日本の持つモノづくり技術を紹介しつつ関係を構築していくことは有効だと思います。
では、日本で半導体製造を行うためには、と考えると、有利なインフラ(材料、装置など)を活かしてグローバルからのリーディングカンパニーを誘致する、はあるかと思います。どの企業を誘致する、あるいは専用ファウンダリーとしてラインを構築するか、は議論のあるところだとは思います。個人的には、(タイガーマスクさんご提案の)隣国の半島企業が合っているかと。本来は、日本市場+海外市場で必要とされるa)半導体デバイスを、b)日本企業がc)日本工場で製造する、と言うのが理想でしょうが、このabcの一貫解がどうしても思いつきません。
No.7:
先日は、非常に参考になる勉強会への参加出来ました事、御礼申し上げます。 タイガーマスクさんの講演では、INTELの盛衰と中国の監視カメラ市場の拡大は非常に興味深い物でした。
以前、メモリーから撤退した時の先を読んだGame Change判断から考えると、今のINTELの姿は、大きくなり過ぎた組織の弊害なのかとも思ってしまいます。 また、原口さんのスタートアップに対する、日本とSilicon Valleyの対比も成る程と感じさせられました。日本の会社組織や国民性の悪い部分が顕著に出てしまう分野ですね。
私自身も、30年以上このIndustryに関わってきましたが、日本半導体メーカーさまの減少は非常に寂しく感じています。
勉強会の中にも出てきましたが、「汎用デバイス」での勝ち残りは、規模や政府の補助の違いで現実的には厳しく、専門性に特化したデバイスや電子部品等の分野で如何に差別化を保持しながら繁栄させるか?が、ありきたりですが、日本電子業界が勝ち残る可能性として残っている手段なのでは無いかと思います。 誠に失礼な内容かも知れませんが、素直な思いを書かせていただきました。今後とも、よろしくお願いします。
No.8:
「半導体マーケッティング開発」の半導体ビジネスの最新事情、裏話的なお話が伺えてとても勉強になりました。やはり気になるのが米国のTSMC誘致やIntelの製造弱体化でTSMC頼りなど心配なことばかりです。一方日本もTSMC、Intel誘致のメディア情報もあるある中で、この国の本来強いはずのモノづくりを憂いるばかりです。最近はサプライチェーン強靭化で政府も重い腰を上げているようです。原口様の米国マーケ経験談から貴重なご意見をお聞きでき大変勉強になりました。心がけたい気づき点があってよかったです。
以上のご意見が寄せられています。さてさてこれらをどのように扱うかについては、正直、私では持て余しています。何か良いアイディアはございますか?
「Mind Fuck, Inside Cambridge Analytica’s Plot to Break the World」Christopher Wyle著 を半分程読み進めました。(書かれている事が本当であれば)何故、アメリカがあのようになったかが、少しは理解できるようになりました。と同時に、日本政府の性急なIT化志向へのアブナさも感じます。デジタル植民地主義Digital Colonialismの餌食になりそう!?
以上
ありがとうございます。
三重野
