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SEAMAJ第二十八回研究会開催録(転載禁止)

SEAMAJ第二十八回研究会開催録

日時 2022年9月24日(土)午後2時30分より午後5時まで 開場午後2時

(ベルギー時間 午前7時30分 上海時間午後1時30分より)  TEAMS

講師 ;田中秀治 教授 東北大学工学研究科

講演テーマ ;中国スマホのアキレス腱~RFFEMと弾性波フィルター

略歴 ;1999年3月 東京大学大学院工学系研究科産業機械工学専攻博士課程修了。博士(工学)。1999年4月 東北大学大学院工学研究科助手。2001年4月 同講師。2003年4月~2013年7月 同助教授。2013年8月 同教授。2004年1月~2006年3月 科学技術振興機構研究開発戦略センターフェロー(兼務)。2006年4月~2018年3月 同特任フェロー。2017年度 日本機械学会マイクロ・ナノ工学部門 部門長。IEEE Fellow、日本機械学会フェロー。日経クロステックに多くのMEMS関連記事を執筆。2018年から2日間でのべ800名の参加者を集めるビジネスコンファレンス“MEMS Engineer Forum”の代表。年間のべ200社以上の企業等の相談にのる。MEMSセンサー、弾性波デバイス、集積化技術、MEMSパッケージング技術、圧電デバイス・材料などの研究に従事。

携帯電話の通信バンド

4Gまで:80バンド程度あり、とても混んでいる。

5G:24 GHz以上のミリ波帯(28 GHz、37 GHz、39GHz、64 GHz~71 GHz)には弾性波フィルタは利用されないが、sub-6の5Gバンドには利用される。ノンスタンドアローンでの運用が先行することから、sub-6のLTEバンドが益々重要になる。弾性波フィルタは、バンド間の分離をする役割をする。フィルタ、デュプレクサ(フィルタの組み合わせ)だらけ。

弾性波フィルタ:

SAWデバイスSurface Acoustic Wave、

BAW デバイスBulk Acoustic Wave

製造方法は、半導体ではあるが求められる制御性が異なる。例えば、膜厚±0.1%が求められる。GHz周波数のズレを抑える為。ノウハウの固まりのよう。Q値は、振動の鋭さを表している。

弾性波共振子を用いたフィルタの仕組み:直列共振子、並列共振子を組み合わせ、共振と反共振によりパスバンドを形成する。リップルと非線形性の抑制のため、スプリアス応答(不要振動)を抑制することが重要。温度安定性とパワーハンドリングも重要。

スマートフォンの中身:

無線フロントエンドモジュールはフィルタだらけ。i-phoneは、フィルタ/デュプレクサを50個以上使うことにより、各国対応を図っている。安いスマホは、ローカル向けなので10~20個程度。

BAWフィルタの小型化:

RFフロントエンドモジュールが複雑化している。SOI-CMOSスイッチ、弾性波フィルタ、パワーアンプ、ローノイズアンプ(LNA)、およびCMOSコントローラーのうち、特に弾性波フィルタの数が増えている。しかし、モジュールに許されるフットプリントには限界あり。モジュールレベル、およびデバイスレベルの両面で小形化が必要。

弾性波フィルタへの要求:

耐電力性 ← LTEでサブキャリアがオーバラップすることあり。小さな非線形性(Inter Modulation Distortion)が必要 ← キャリアアグリゲ―ション。基本性能のさらなる向上(挿入損失、カットオフ特性、温度特性)← 高難度バンドの存在(例:LTE Band 25、Band 11+21)。5Gの高周波バンド(3.5~5 GHz)

BAWフィルタの高周波化5Gに向けて:

• 材料の音響ロスが増える。音響ロスはおおよそ周波数の自乗に比例。音響ロスで支配的な材料は電極の金属であり、次にパッシベ―ション層や温度補正層の誘電体。AlNの音響ロスは相対的に小さい。

• 50 Ω整合のため、BAW共振子の面積が小さくなり、結果的にサポートロスが増える。共振器厚さは1/fに比例し、インピーダンス(1/jωC)も1/fに比例するので、共振子のインピーダンスが一定の場合、共振器面積は1/f2に比例。このとき共振器周長は1/fになるので、相対的にサポートロス(周辺への音響エネルギーロス)が増える。

• 小面積の共振子を避けるには、2倍の面積の共振子を直列にすればよいが、抵抗性のロ

スが増える。

• 上と同じ理由で、周辺の拘束の影響が相対的に多くなり、スプリアスが増える。

• FBARの場合、共振子が薄くなるので、熱伝導が悪くなり、面積が小さくなることと合わせて、パワーハンドリングが悪化する。空洞のないSMRの方がパワーハンドリングに有利(音響ミラーの酸化物厚さが小さくなる)。

• 5Gの新バンドn79(4.4~5 GHz、12.8% BW)とn77(3.3~4.2 GHz、24% BW)は、バンド幅が大きい。ScAlNの利用が必須だが、ロスが増える。また、ScAlNを用いたとしても、インダクタによるバンド幅の伸長が必要で、帯域外抑制が悪化する(CAで問題)。それでも5G用BAWフィルタの開発は大手メーカーで進んでおり、実用可能な水準に到達。

MEMSビジネス:

-ボッシュが8年連続一位。BAWフィルタが最大の商品で、サプライヤーはBroadcom、Qorvo、Qualcomm、Skyworksなど。欧州+日本。2021年に急成長した。SAWフィルタはMurata。MEMSのフォアキャスト(Yole 2018~2026)では、2027年には22B USD。その中において、RF(ほぼBAWフィルタ)は伸びが良い。

-中国は、スマホ生産の為に高性能フィルタが必要で止められると大変。

中国国営企業であるZTE(中兴通讯)は米国のRFフロントエンドモジュール等の輸入ができなくなり、経営危機に陥った。→ 中国でBAW/SAW内製化フィーバー。

ROFS Microsystem(诺思(天津)微系統)

四川省綿陽市はFBARフィルタを製造する诺思(天津)微系統(ROFS Microsystem)と戦略的協力協定を締結。綿陽市游仙区の工場に総額128億元(約2100億円)を投資。将来的には、年間生産量100億個以上、年間生産額約150億元(約2500億円)、雇用3000人を見込んでいた。この企業の創業者らは産業スパイでFBIに指名手配され、1名

は米国で拘束された。特許訴訟を恐れて顧客が敬遠か?

• 訴訟を恐れて顧客がほとんど付かず。

• 中国の(二流)顧客にたたき売りするのがせいぜい。

• 資金繰りに行き詰る。

• 南昌政府傘下の南昌高新不動産投資有限公司が資金回収についてROFSを訴える。株式取得。

• 役員の入れ替え。

• 賃金の遅配。従業員の退職。

• 内部の腐敗

• ROFSは存続しているが、最新状況は不明

San’an Optoelectronics(三安光電)

LED大手企業。LED、パワーアンプ、SAW/BAWフィルタなどの技術開発と福建省泉州市での工場建設に、7年間で333億元の投資を発表。東京にデザインセンターを設立。

その他にも多くの中国企業がBAS/SAWフィルタに取り組んでいる。

Huawei、 Shoulder、 Huntersun、 Huaying、 Microgate、 QuantGrav、 Fingu、 CRT、 SiLi BAW etc.

中国では、ROFS以外に多くの企業が弾性波フィルタの事業化を目指している。

特許はどうするのだろうか? リーディンググループにおいて、既にクロスライセンスが成り立っているので新規参入の場合は寿命切れ特許技術を頼りにしているのだろう。

質疑応答

K:SEM写真について、フィルタが五角形である理由は? スプリアスとなる横方向の定在波の抑制の為である。太陽誘電、スカイワークスは楕円形を用いている。

米中問題について。HWは2019年末、SOC内製化等を図っている。それ以外は外部調達? フィルタは、HW横浜でも開発をしている。

S:膜厚制御が厳しいとのことであるが、どのようにやっているのでしょう? BAWは、Sガンスパッタ装置やRFマグネトロンスパッタ等を使い、ある程度の膜厚分布に追い込んだ後に、イオンミリングでトリミングし膜厚精度を出している。

K:弾性波フィルタビジネスの将来性は? 現在は混み合っている周波数帯なので、フィルタが必要である。5Gバンドでは混み合っていないので、使っていない。他のフィルタを使っている。

T:電子と電機、機械とのつながりによるビジネス。荏原のエンジニアは対応できているとは言えない。どうしたらいいだろうか? 日本人は得意なのだと思う。但し、ビジネス面では弱い。投資が海外と比べて額、規模で負ける。

W:三安工場は? アモイに建てている。コロナ前からどうなったか?今は量産装置で埋まっていると思う。商品は大量に出ているかというとそうでもない。ウエハー歩留まりは、噂ではシングル台らしい。

以上

ありがとうございます。

三重野

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