SEAMAJ第53回研究会開催禄
2024年10月26日(土)午後3時半より (ベルギー時間午前8時30分、上海時間午後2時30分) 開場午後3時
講師 ; 沼澤 建様 独立行政法人 国際協力機構 JICA
講演タイトル ; JICAインド半導体分野協力について(案)
〰日印半導体サプライチェーン強化に向けて〰
概要; JICAは、外務省が所轄する独立行政法人と位置付けられ、日本の政府開発援助(ODA)を一元的に行う実施機関として、開発途上国への国際協力を実施しています。対印半導体協力を推進すべく、特に製造インフラ整備がインドのアキレス腱になると判断し、半導体製造のエキスパートとの交流を図っております。
この機会に、半導体製造産業に携わる皆様と、日本にとってより良い方向となるよう議論がしたく、さらに可能であれば協力体制を整えたいと考えております。
参加者(敬称略)
沼澤(JICA)、太田、濱田、Sai Chandra Teja R(WBA委託、インド), 佐藤(泰)、滝山、河込(WBA)、米田、渡邊、国井、水島、林、原口、小川、田中、鈴木(寿)、松野(JICA インド駐在)、新井、筑根、辻村、三重野
JICAインド半導体分野協力について(案)沼澤様報告
既に送付している資料をご覧ください。
インド電力インフラの本当の問題点 SEAMAJ 太田透嗣夫様報告
インドの電力インフラの脆弱性
過去の大停電を引き起こした理由は、一部の州で制限以上に電気を使ったため。
・ピークの電力需要 vs 発電能力の 10%以上不足
・送電ロスが 25%程度 大半は盗電や料金回収システムの不備
・政策的に家庭向け・農業向けなどの電力価格が低く抑えられている⇒配電会社の巨大な赤字
コスト回収に不安を持つ発電会社が新規の電源開発を抑制
・石炭・天然ガスの不足⇒既設発電所の稼働時間の制約、新規発電所では立地の遅延
経済成長に伴って電力需要は旺盛な伸び(年率 8.1%の増加)
需給状況だけで考えるとインドの電力インフラは危機的な状況で、今後も大停電が頻発して、社会・経済が大混乱に陥ると考えるのが一般的である。
インドの日系企業では、電力の需給バランスは問題視されていない。
これは、電力品質が低いため、工場には必要な電力を常に 100%供給できる自家発電が設置。
多くの工場・病院・ホテル・ビルなどでも同じであり、自助努力で「困ってはいない」
電力インフラを民間側が自家発電でカバーする場合、電力コストは 2 倍
グジャラート州は各種インフラ整備に力を入れ、州単位ではあるが問題の解決に向かい始めている。
インド進出のメリットとデメリット
メリット1 , 2 0 2 9年 日本 を抜 き世界 3位の経済大国
メリット2 , 2 0 5 0年 1 7億人の人口 若年労働者が潤沢 に存在
毎年 4 3 0万人の新卒者 内 9 0万人の理系卒業者
メリット3 ,経済特例区 と特定分野における税制優遇制度
+特定事業分野における補助金
デメリット1 , 自由競争 を阻むカースト・ ジャーティ制度
デメリット2 , インフラの未整備 、特に電力 インフラは深刻
デメリット3 , 他民族 、多宗教国家 ならではの目に見 えないビジネス障壁
その他要検討事項
1 , 事 業(合弁 )会社全体の人の教育 特に、技術者や製造関係者
2 , 技術分野 と導入先の詳細検討
3 , 工場建設予定地の検討 (土地の調査や振動 、大気汚染等 )
4 , 工場建設関係 (設計会社 、建設会社等の詳細調査 )
5 , 製造装置の選定 (入札から装置導入 、メンテ能力等全般の対応 、保守部品の供給 )
6 , 供給水 と超純水 、ガス、薬品等の供給会社の選定
7 , 電力供給公社 との具体的 な打 ち合わせ(安定電力の供給 )
8 , 排気 ガス、廃水処理の検討
9 , 定期的 な部品の洗浄 、最初は日本 で洗浄 、その後現地の洗浄会社 を立 ち上 げ。
1 0 , 消耗部品や洗浄部品の現地 免税倉庫の設 立
1 1 , 製造装置搬入手段 と経路の調査 (大型エアーサス車や道路の振動防止対策等 )
1 2 , Clean Room の構造設計
1 3 , 工場建設時の事故防止 、安全対策グループの組織化
1 4 , 半導体 プロジェクトのビジネス分野の検討 ( メモリー、ロジック、ファンダリー、パワー)
1 5 , プロジェクト可能 な総投資金額
1 6 , ISO 認証 (品質管理 システムと生産製品への適用 )
1 7 , 特許対策(特許調査 と提案 )
1 8 , 自動搬送 システムの導入 ( スピードアップと作業 ミス防止 )
1 9 , 生産管理 、経営管理 、顧客対応のシステム導入
QA(敬称略)
田中;インドは世界最大の民主国家であるが、ヒンドゥー至上主義のモディ首相はかなり権威主義になっていくのでは? 政治面でのリスクはどうか?
沼澤;宗教間対立等の話が耳に入ることは多いものの、現状主要地域の治安は概ね安定している。結局は州ごとに状況が大きく異なり、政権野党の国民会議派が強い州もある。中央政府もBJP(インド人民党)は連立政権で多党への配慮が必要。今後も政局を見る必要はある。
田中;GJ州においては、5年前にイスラムを痛めつけたこともある。リスクは無い(先方ママ)?
沼澤:今回テーマのGJ(グジャラート)州は治安等落ち着いており、多くの外資の投資も進んでいる認識であるが、GJ州含む各州の状況をよくフォローして判断を行う必要がある。
林;バンガロールには、日本企業DNPの設計事務所がある。が、設計人材を使おうとしたが、上手くいかない。文化の壁か? よく勉強をしてかからないといけないだろう。
沼澤;どういう点で上手くいかなかったかを、詳しく聞きたい。日本企業がよく進出しているところはある。
林;タミル・ナド州に行くことになった。日本としてビジネスはやりやすいか?
沼澤;JETROの方が詳しいが、JICAも同州に多くの案件を有する。比較的やりやすい。タミル人が多い。コミュニケーションは取りやすい。ベジタリアンが多い。
渡邊;日本政府、米国政府、国家安全保障の観点で、最先端半導体のRD(研究会開発)において問題が多い。経済安全保障で国家が走っているが、半導体技術をインドに対してサポートするということは、経済的に良いだろうが国家安全保障についてはどう考えるか?
沼澤;留意しながら、考えていかなければいけない。が、先ず、インフラの整備が先である。技術流出は留意が必要。
渡邊;欧米のような倫理感は育たないと思った方がいいであろう。
松野(JICA, インド駐在);経済安全保障、日印関係をどうするか。インドはどこまで強国になるか。日本の大学も連携する国をインドも含めてDiversifyしなければいけない状況と考える。近い将来のインドが日本にとっていい国か?は相対的な問題もあり難しい問いだが、経済・外交上日本にとってインドが重要な国であることは皆が感じている。 現時点においては、(経済的発展が見込まれる)インドに日本として(世界各国との競合の中で)如何に食い込んでいくかが、緊急の課題であるのではないか。日本に一定の強みのある半導体産業であれば、何とか食い込んでいける余地はあるかもしれない。
渡邊;国同士で関係をガッチリと作っていただきたい。
辻村;かつてSEAJ会長の時に、インドを訪問しバサド大臣と会見をした。その時は、パワーデバイスから始めると言っていた。バンガロールのナノサイエンス&テクノロジー研究所を訪問したら、MEMS技術があった。自分は、1985年の前は水力発電所の仕事をしていた。インドの半導体工場には、専用の自家発電所を作ればよい。
インドでは、「ナマスカール」「ダイニャワード」と言えば、好感を持ってもらえた。
松野;多民族で形成される社会では様々な言語もある。タミル語では「ワナッカム」という。
田中;人材は?ばらついている?
沼澤;ワーカーレベルでは、日本人ほど勤勉ではない。
田中;大学の奨学金システムの問題。中国の留学生は金があるので、日本の大学に来やすいが、インドなどGlobal South諸国から来るのは大変だ。間口を広げる為に、エンジニア等JICAが丸抱えで日本の大学院留学できるような仕組みを作ったらよいだろう。
沼澤;IITとか優秀である。しかし、日本が第一の選択ではない。日本留学の良い点は、学費が抑えられるなどあるので、こういう点をアピールしていきたい。
辻村;ナノサイエンス&テクノロジーは、田中先生のところと似ている。
田中;訪問したことがある。が、試作などをやってもらうには時間がかかる。オペレーションの問題がある。
松野;半導体製造のために、インフラ、人材と問題はある。GJ州は比較的状況が良い州である認識。スズキ自動車はそこで大規模に操業している。半導体については、GJ州関係者と話しをすると、インフラもそうだが人材面で大きな課題感を有している印象。
田中;ドレラ、PSMC,TaTa工場の予定地は、とんでもなく何も無い。とても暮らせるとは思えない?
松野;ドレラ工業団地は、モディが州首相だった時から、注目されていた。塩が出たので、農業が出来ない土地。交通はまあまあ。空港、交通を整備で、場所の選定は政治的な要素も多いだろう。進出企業最大の問題は住環境。いいホテルは無いかと聞かれる。GJ州は禁酒という要素もある。
濱田;先ほど、インドでパワー半導体の設計をやっていると紹介された人にお伺いします。将来ビジョンは?
Teja; インドとしては、中国から半導体輸入を下げたい。CMOS ICを手掛けている。SiC/GaNは、インフィニオン、クリーがGJ州に設計センターを作る話がある。
濱田;パワーは、EV製造において垂直統合でTataの目標となるだろう。米国においては、トップ人材にはインド系が多いし留学生も多い。日本はどうなのだろう?
Teja; 政府補助金をファブレス企業に出す考えがある。
日本は、インドの若者に日本の宝物で魅了させなければいけない。アピールが弱いし、それでは欧米に行ってしまう。
例えば、
インドのIPを世界に紹介、発信、製品提供するのは、日本となれば。
次回11月30日(Face to Face)も、引き続きJICA様との会合を行うこととした。
(注)各発言は組織を代表するものではなく個人の見解
(文責 三重野)
ありがとうございます。
三重野
