SEAMAJ第46回研究会 TEAMS 開催録
2024年3月30日(土)午後2時半より (ベルギー時間午前6時30分、上海時間午後1時30分) 開場午後2時
講師 ; 新井 大輔 様 博士(工学) 研究員
名古屋大学 未来材料・システム研究所 山本研究室
講演タイトル ;
『ラピダスは日本の財政破綻を防ぐことができるか?
~経済安全保障の考え方~』
☆ バランスシート(貸借対照表)の基礎
☆ 通常の先進国に見られる4つの経済主体とそれぞれの貸借対照表
☆ 財政破綻しない国の貸借対照表
☆ 財政破綻する国の貸借対照表
☆ 経済安全保障は、何のために、何をすることか?
☆ (補遺) 覇権国のみ許される(必要とされる)対外赤字
参加者(敬称略)
国井、新井、和田木、米田、小森、小林、田中、渡邊、林、堀口、三重野
☆ バランスシート(貸借対照表)の基礎
前回に引き続き、パランスシートの基礎について個人間の貸し借りを例として解りやすく解説。
詳細は省くが、貸借により貸借対照表上においては資産が増えるということになる。
☆ 通常の先進国に見られる4つの経済主体とそれぞれの貸借対照表
-管理通貨制度を採用する先進国の貸借対照表と国債発行による公共事業の執行例
日銀、市中銀行、民間事業者、政府(4つの経済主体)間における国債取引を、示している。初期状態では、国債3ブロック(トンネル、橋、道路)に対して民間預金ブロック3ブロックが対応している。
(1)国が新たに公共事業を執行する為に、国債を発行する。
(2)市中銀行が、日銀当座預金を使って政府から国債を買おうとする。
(3)市中銀行による国債購入が完了、二銀踏査預金が政府の手元に入る。
(4)政府が保有する日銀当座預金は、政府預金と呼ぶ習慣。
(5)政府預金が手に入った政府は、公共事業として下水道を発注、民間が下水道工事。
(6)民間が下水道を完成させると、政府に納入準備、政府は支払いを準備。
(7)下水道を政府に納入完了、政府は政府預金を民間に支払う。
(8)民間は受け取った政府預金を、市中銀行に預け入れ準備。市中銀行は受け入れ準備。
(9)市中銀行が、民間に預金を渡し、民間は政府預金を市中銀行に渡す準備。
(10)民間が市中銀行に預け入れ完了、市中銀行は政府預金を入手。
(11)市中銀行が保有する当座預金は、日銀当座預金と呼ぶので呼称を政府預金から変更。
(12)B/Sの順序を整理すると、この状態で国債が4ブロック、民間預金が4ブロック。
中央銀行による国債買いオペ事例
- 市中銀行の日銀当座預金保有率が低いと判断される場合は、日銀が買いオペ。
- 日銀が日銀当座預金を発行し、市中銀行が保有する国債を買い上げに行く。
- 国債が市中銀行から日銀に、日銀当座預金が日銀から市中銀行に移動。
ここまでのまとめ
•国債を発行して、公共事業を実施すれば、資産としてのインフラが増加し、国民の預金も増加する。
•そもそも、民間事業者・民間人の預金は、公共事業の実施によらなければ増えない。 (厳密には、マネーストックM2は、公共事業もしくは民間の借入れのどちらかで増加するが、本日は前者のみ触れた。)
•国債が増える量と、民間事業者・民間人の預金が増える量は、ほぼ同じ!!
• ↑ 本当に同じ量だけ増えているか、検証しましょう。
•民間事業者・民間人の預金は、マネーストック M2を見るのが適切と思われます。そこで、日銀のM2統計をグラフ化したものを見てみましょう。
•日本国債の発行残高は、財務省から公表されています。
•同じ年度ごとに、両者を比較すると、ほぼ平行移動で推移していることが分かります。
•なお、M2が国債残高を少しだけ上回りますが、その差分は、企業が銀行から借り入れ、銀行に預けている預金と考えられます。
•自国通貨建て国債を発行して、自国の民間事業者に公共事業を発注する場合、社会インフラが充実します。
•このことによって、傷つく人は基本的にいません。
•ただし、インフレが発生した場合は、物価上昇によって国民が傷つきます。
•ラピダスを国が丸抱えして経済安全保障を充実させようということは、半導体製造業・クリーンルームを、公共事業・社会インフラとして位置づけよう!! という意味になります。
では、経済安全保障とは、何をどうすることでしょうか?
•ここまで紹介したお金の流れでは、どこかで破綻する取り引きは出てきませんでした。
•「自国通貨建ての国債は、破綻に至らない」と言われる例に当たります。
•ただし、公共事業を勢いよくやると、資材不足や、人手不足が発生し、物価が上昇する場合があります。
•このようなインフレに注意すべきであると言われています
•実際、日本を除く先進国は、コロナ禍に対して公共事業を執行しすぎたため、激しいインフレに見舞われました。
破綻する例とは
Ⅰ.公共事業を国内企業が受注できず海外企業に発注せざるを得ないとき。この場合は、日本国内には金は回らず、国債と公共事業の結果として例えばトンネルが残る。米国内に金が増える。
- 二つの国を仮定。日本円建て資産に記号(Y)、米ドル建て資産に記号(D)とした。
- 日本政府が公共事業を執行するため、円建て国債を発行。
- 市中銀行が日限当座預金を使って、日本国債を購入しにいく。
- 市中銀行による国債購入完了。日本生具が、日銀当座予期を入手した。
- 市絵部方湯の日銀当座預金は、西武預金と称する。
- 公共事業としてトンネルを発注したかったが、日本で受注できるゼネコンがなく米国に発注。
- 米国ゼネコンがトンネルを完成。日本政府に納入準備。今回は支払いを日本円で受けてもらえたとする。
- 日本政府がトンネルの納入を受け、米国ゼネコンに政府預金を支払い。
- 米国ゼネコンも政府預金を田立に市中銀行に預ける必要があるため、美国市中銀行が受け入れ準備。
- 米国市中銀行が預金を準備し、米国ゼネコン保有の政府預金と交換準備。
- 米公市中銀行が政府預金を入手し、米国ゼネコンは市中銀行に預金を保有。
- 市中銀行が日銀に保有する当座預金は、日銀当座預金と呼ぶため、名義変更。
Ⅱ.日本に強い自動車会社が居る場合。この場合は、米国に車を売るので、車は米国民間事業者に、金は日本。破綻はしにくい。
- 自動車会社が、買掛金で材料を買ってきて自動車を製造する。
- 自動車を海外の民間企業(または民間人)にドル販売する。
- 自動車を改廃に輸出完了。日本人がドルを入手。
- 米国人は、手持ちの日本円を、いつかは米ドルに交換したい。日本は、その逆。
- 米国人は、外国為替市場で、日本円を売って米ドルを買うオファー。日本はその逆のオファー。
- 外国為替市場での取引が成立すると、日本人に日本円が戻り、米国に米ドルが戻る。
- 外国為替市場での取引が並行して、お互いに破綻しない。為替レートは、通貨間の売買圧力で決まる。
- 米国の市中銀行に預けている日本円の預金を、日本の市中銀行の口座に振り込むことは可能。
- 預金と、日銀当座預金を同時に、米国の市中銀行から、日本の市中銀行に移動させる。
- 預金名義を適切に切り換える。
Ⅲ.日本に強い自動車会社が居なければどうなる? 日本が破綻する。
(1)Ⅰの後に、再び公共事業を海外に発注する場合。
(2)公共事業の為に、市中銀行が国債を買うために日限当座預金を補給する必要がある。
(3)日銀が日銀当座預金を八行し、市中銀行が世風する国債を買いオペしにいく。
(4)荷に銀による国債買いオペが完了。
(5)日本政府が国債を発行。
(6)市中銀行が日銀当座預金を使って、国債を購入しに行く。
(7)市中銀行が国債購入を完了。政府が日銀当座預金を入手。
(8)政府が保養する日銀当座預金を、政府預金と米議変更。げすどうを米国ゼネコンに発注。
(9)米国ゼネコンが下数同を建設し、納品準備。
(10) 米国ゼネコンが下数同を日本政府に納品、日本政府が政府予期を支払い(円建てで払えたものとする)
(11)米国市中銀行が、米国ゼネコンから予期受け入れ準備
(12)米国市中銀行が預金を米国ゼネコンに私、米国ゼネコンが政府予期を米国市中銀行に渡す
(13)米国市中銀行と米国ゼネコンとの間で決済完了
(14)米国市中銀行が日銀に保有する当座預金は、日銀当座預金と称する
•日本側の破綻状態を表しています
•米国人は、米ドルで生活する人たちなので、日本円を一時的に何らかの支払いのために持つことはありますが、最終的には外国為替市場で日本円を売り、米ドルを買う行動に出ます
•このとき、日本人の誰かが、米ドルを売って日本円を買えば、外国為替市場で、安定した為替レートで取引されます
•しかし、米ドルを売って日本円を買う人が現れなければ、日本円が一方的に売られるだけになり、外国為替市場において、日本円が大幅な円安に見舞われます
•日本円が大幅な円安に見舞われると、公共事業を円建てで発注することができなくなります
•日本の公共事業であっても、米ドル建てで発注せざるを得なくなります
破綻の最終段階に至った国の姿を、以降で見てみましょう
- 次の公共事業は日本円で発注できないので、日本政府がドル建て国債を発行
- 日本政府が米国市中銀行に、ドル建て日本国債をバイ極、米国市中銀行から米国債を購入する
- 日本政府が、ドル建て日本国債を売却し米国債の購入完了
- 日本政府が、米国ゼネコンに上水道をドル建てで発注。米公ゼネコンが上下水道を建設。
- 米国ゼネコンが上水道を官製させ、日本政府に納品準備
- 上水道の納品完了。日本政府は、米国ゼネコンに米国債を支払い
- 米公市中銀行が米国ゼネコンから預金受け入れ準備
- 米国市中銀行が米国ゼネコンに預金を渡し、米国ゼネコンは米公市中銀行に米国債を渡す
- 決済完了
破綻する国の最終的な姿
•ある国が、外国為替市場における自国通貨の暴落および、自国の産業の空洞化によって、自国通貨建ての国債を発行できなくなったとき (発行しても、支払いに応じてもらえないとき)、その国は破綻しています
•こうなると、たいてい、米ドル建て国債の発行に追い込まれますが、それは破綻した国の最終的な姿と言えます
•もともとこのような状態に陥る引き金は、公共事業を国内に発注できなくなり、海外事業者に発注せざるを得なくなるところから、スタートします
日本の現状
•日本では今のところ、建設事業については、国内ゼネコンが受注できています (今後、人手不足や資材高騰のため、怪しくなるかも知れませんが)
•しかし、資源エネルギーと、食料については、圧倒的な輸入国であるため、これと平衡を作れるような輸出産業が必要です
•今のところ、自動車が輸出産業として機能しています
•半導体については、コロナバブル時に、国内で自給できなくなり、海外からの輸入に大幅に頼る事態になりました
•このことは、国内で使う半導体に関して、海外事業者に支払いをしていることになり、上記のゼネコンの例を半導体に焼き直した事例になります
•従って、半導体の自給 = 経済安全保障 が必要ということになります
経済安全保障の考え方
•第一条件として、『国内で使うものを、国内で供給できること』が挙げられます
•第二に、余裕ができたら、『資源エネルギーおよび食糧の輸入による通貨流出と平衡できるだけの、輸出力を持つこと』となるでしょう
※なお、資源エネルギーと食料について、輸入を減らして自給力を身に付ける、でも構いません
覇権国にだけ許される貿易赤字
•地球上で、特定の覇権国だけ、意図的に貿易赤字を出し、海外に通貨を握らせることによって、地球全体の人類の活動を監視することができます
•現在、該当するのは米国だけです
QA(敬称略)
渡邊;マイナス金利政策を解除し、金利は0.1%となったが、企業内部留保はどうなるのだろうか?
新井;銀行に預けっぱなしですねえ。低金利であっても、民間事業者は借り入れが広がらなかった。民間事業経営者の積極性が無い。
とするならば、公共事業をもっともっとやらないと金が回らない。
海外から半導体を買うということは、最終製品が十分な良と利益で海外に売ることができる場合には良いだろうが、層でなくなった場合は破綻に向うことになる。
ラピダスは、2nmを含めそれ以降の最先端半導体の国内調達を目的の一つとして設立されたと思われる。
しかし、先ずは使われる半導体からやって日銭を稼ぐべきである。この考えは、津田健二氏も以前の研究会で述べていた。
渡邊;海外ゼネコンが日本国内に代理店を持っている場合は、日本の破綻という問題は回避できる?
新井;資材、人材が日本で調達できれば、金はある程度は日本に残る。
渡邊;ラピダスは、チップレットも製造するとしている。しかし、量産先行他社は、海外で製造しており、(経済的)問題が大きくなるのではないだろうか?
新井;設備、資材を海外から調達するとすると、、、資源、エネルギーと経済均衡するだけの「何か」が必要でしょう。「車」が海外で売れているうちは、日本は破綻せずに良いだろうが。
渡邊;ラピダスは、EUVLをオランダから調達せねばならない。ASMLはヨーロッパで部品調達を行っている。High NAは、一台六百億円とか。
ラピダスが、経済均衡する「抽出物」はあるのだろうか?
(公共事業として、工場建設、設備導入等として半導体関連、地域に金が回る。しかし、ラピダス製品が売れない場合や生産立ち上がりが遅い場合は、赤字を垂れ流すことになる。半導体関連と言っても、設備等の金額ベース国内調達率は半分以下であろう。おそらく、投資金額の半分以上は海外に持っていかれるだろう。「車」のような強かった輸出品が日本に存在し続ければ、例え赤字の垂れ流しであっても、公共化していく(かもしれない)ラピダスへの血税の定期導入により企業存続は可能であろう。)
和田木;半導体製造は、各国が競っている。例えば、中国が最先端製造で各国を抜く可能性もあるかと思う。そうすると、再先端製造の価格競争は厳しいのでは?
三重野;中国が、2nm以降で先んじることは有り得ないと思う。
小森;中国でのASML液浸の数は、37台と調査した。
三重野;SAQPロジックだけでは無く、他のデバイスも使用するはず。EUVL無しで、5, 3nmは出来たとしてもその先は続かない。
林;今回のSPIIではサムソンが、EUVLを最小限にしてコスト効果を狙った方向性を打ち出していた。
また、マルチビーム露光において、高スループットのマチュア向けで中国から多くの引き合いが来ていると聞いている。
田中;IMSですよね。ニューフレアはどうなのですか?
林;追いついてきた。TSMCが発注。二桁にはいっていない。IMSは52台。
小林;日本製半導体製造装置の1~2月販売は中国向け装置が45%を占めた。オランダの装置は1月からブレーキがかかっているとの報道もある。
新井;元ルネサス、中国企業(パワー半導体)で働いている友人から聞いた話で、日本企業に売り込みに行った。相手は価格が安ければ買う。(ディスクリートは部品なので。)
新井;シリコンウエーハの売り込み、6,8インチパワー向けは空白地帯となっている。
小森;6インチまでは、中国産が入っている。ドイツは6インチ撤退、サムコもやりたくない。
(文責 三重野)
以上
ありがとうございます。
三重野
